会社員(給与所得者)の副業は事業所得と雑所得どっちになるの?
確定申告は必要?申告するときに何か注意すべきことはあるの?
わかりやすく教えてほしい。
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- 会社員の副業は確定申告が必要なのか
- 会社員の副業は事業所得と雑所得どちらになるのか
- 確定申告をするときに注意すべきこと
- これらについて、税理士がわかりやすく解説します。
本記事の信頼性
本記事を書いている僕は、30代2児の父でもある税理士です。
子育て世代に役立つ育児に関する情報や、マネーに関する情報をなどをまとめています。
副業を解禁する企業が増え、会社員であっても給与以外に副業で収入を得る人が増えています。
30年間、一向に平均年収が上がらない国なのですから、今後もこの流れは続くのでしょう。
そうなると面倒になるのが「確定申告は必要なのか?」「事業所得と雑所得のどちらになるのか」という問題です。
今回はこれらについてまとめていきます。
最初に結論だけ簡単にいいますと、次のとおりです。
- 会社員が副業をした場合、確定申告が必要になる
- 会社員の副業は、帳簿の有無、収入金額、事業性や営利性の有無などにより「事業所得」か「雑所得」を判断する
理由について、この後、なるべくわかりやすく説明します。
少し掘り下げた説明も併記しているので、適当に読み飛ばしながら、参考にしてもらえれば嬉しいです。
もくじ
会社員の副業は確定申告が必要か
確定申告の前に、まずは会社員の年末調整について簡単に説明します。
年末調整とは
会社員(会社から給与をもらっている人=給与所得者)は自分で確定申告することはそれほどないと思います。
今まで一度もやったことのない方も多いかもしれません。
その理由は、会社が年末調整をしてくれるからです。
年末調整は、会社が代わりに申告と納税をしてくれているようなものです。
そのため、会社員は基本的には確定申告をする必要がありません。
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年末調整とは
会社員は毎月給与をもらうときに、会社に税金を少し差し引かれています。これを源泉徴収といいます。
会社はこの税金を毎月、会社員の代わりに国に納めています。ただし、この税金はあくまで仮の数字です。
そのため、会社は一年の最後の給与を支払う12月に、きちんとその人の税金を計算して、調整します。
これを年末調整といいます。
毎月、差し引かれている税金は少し多めに徴収されているので、たいていの人は12月の年末調整で、少し税金が戻ってくることになります。
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会社員でも確定申告が必要になる場合とは
そんな会社員でも確定申告が必要になるケースがいくつかあります。
具体的には次のようなケースです。
- 年収2,000万円超の人
- 給与以外の所得が20万円超ある人
- 2ヶ所から給与をもらっている人
- 医療費控除、寄附金控除などの控除をする人
- 住宅ローン控除を受ける人
これらは主なもので、実際には上記以外にも確定申告が必要になるケースはあります。
副業で申告が必要になる場合とは、この「給与以外の所得が20万円超ある人」に当てはまったときに該当します。
なお、ここでいう「所得」とは「収入から経費を引いた金額」です。
収入が20万を超えていても、経費を引いて20万円以下になる場合は当てはまりません。
副業の所得が20万円を超えるとき
会社員でも副業の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になると説明しました。
じゃあ、副業の所得が20万円以下であれば、確定申告しなくていいの?
そう思いますよね。
でもちょっと違うんです。
副業の所得が20万円以下のときに確定申告しなくていいのは、所得税の確定申告だけ。
つまり、
住民税の確定申告は必要!
住民税の確定申告は、副業の所得が20万円以下でも必要になるのです。
ややこしいですよね。
所得税の確定申告と住民税の確定申告の関係は次のような整理になります。
パターン | 住民税の確定申告 |
年末調整をした人 | 不要 |
所得税の確定申告を提出した人 | 不要 |
所得税の確定申告が不要な人(副業所得あり) | 必要 |
「年末調整した人」や「所得税の確定申告を提出した人」は、年末調整や所得税の確定申告の内容が市区村町に共有されて、住民税が計算されることになります。そのため、住民税の確定申告は不要となります。
一方で、副業の所得が20万円以下で、所得税の確定申告が不要な場合、市区村町にその情報が共有されないので、住民税の申告を別にしないといけません。
つまり、副業で所得がある場合、所得税の確定申告、または、住民税の確定申告のいずれかを行うことになります。
副業は「事業所得」と「雑所得」のどちらになるのか。
では、副業の確定申告をする場合に、どのような所得区分で申告をすることになるのか。
結論として、会社員の副業は、大半は「雑所得」になると考えられます。
事業所得になることもありますが、会社員の副業の場合、ちょっとハードルが高めです。
この辺りについて、説明したいと思います。
なお、2022年10月7日に所得税基本通達の改正が公表されています。
詳細については以下でまとめているので参考にしてください。
事業所得と雑所得の違い
まずは、そもそも事業所得と雑所得で何が変わるのかを説明します。
簡単にいうと、次のようなイメージです。
- 事業所得の方が節税に繋がるお得な制度を受けることができる
- 雑所得は事業所得のような、お得な制度がない
- その分、事業所得と認められるためのハードルはやや高め
ここでいうお得な制度とは、いろいろありますが、主なものとしては次のような制度です。
- 給与所得等との損益通算
- 青色申告特別控除(65万/55万/10万)
- 青色事業専従者給与
- 純損失の繰越しと繰戻し
それぞれ細かい要件やルールがあるので、具体的な説明はここでは割愛しますが、ポイントとしては、これらを受けられると節税に繋がるなど、納税者の得になるということです。
事業所得の方が節税になるなら、副業を事業所得として申告すればいいってこと?
そうしたいところですが、事業所得として認められるには、いくつかのハードルがあります。
事業の実態がないのに「事業所得」として申告してしまうと、税務署からNGを出される可能性があります。
このあたりを次に説明していきます。
会社員の副業が事業所得と認められる条件
先に結論から言いますと、副業に次のような要素がある場合、事業として認められる可能性が高いと考えられています。
- 帳簿書類を作成・保存している
- 営利性、有償性がある(安定して収入が得られているか)
- 継続性、反復性がある(単発ではなく、継続的に行われているか)
- 自己の危険と計算において独立して行う業務である(精神的・肉体的に労力をかけているといえるか)
- 社会的地位が客観的にあるか(一般的な感覚として事業として認識されるものか)
少しわかりづらい表現が多いですよね。
すごく簡単に言えば、「帳簿をつけており、かつ、一般的にちゃんと事業と言えるような実態がないとダメですよ」ということです。
なぜ、こんなわかりづらい条件なのか。
事業所得が生じる「事業」とは何か、どのように判断するのか。
厄介なことに、税法では、このあたりが明確には規定されていません。(正確にいうと、規定はあるけれども、抽象的な表現、という感じです)
そんなこと言われても困ってしまいますね。
そのため、実務上は、事業所得か雑所得になるのかが争われた過去の判例において、いくつかの判断要素が示されているので、これを参考にして判断することになります。
この判例で示された判断要素というのが、上記に挙げた条件となります。
そのため、少しわかりづらい表現となっています。
副業の規模にもよりますが、ある程度の収入が継続的に副業から生じていないと、なかなか事業所得として認められるのは難しいと考えられています。
税務上、このようなグレーなものは実はたくさんあります。
そのため、副業であっても、事業としての実態を示していると説明ができるのであれば、もし、事業所得としたことを税務署から指摘を受けたとしても、説明して、認めてもらえる可能性はもちろんあります。
確定申告は税務署から指摘をされて、間違っていると判断されても、罪を問われたり、捕まることはありません。(よほど悪質な所得隠しや脱税であれば話は別ですが)
見解の違いなんてものは実務上たくさん生じます。
そのため、最終的に間違っていたとなったとしても、修正して申告すればいいのです。
自分の副業は実態として事業なのだ、と説明ができるのであれば、事業所得として申告することも選択肢の一つだと考えます。
まとめ
会社員の副業では所得税が申告不要だとしても、住民税の申告は必要になります。
また、会社員の副業が事業所得と認められるためには、帳簿書類の作成と保存の他、事業としても実態が必要となります。
確定申告って面倒ですし、難しいですが、副業を行うなら避けては通れないものではあるので、勉強してみると面白かったりしますよ。
簿記を勉強するだけでもだいぶ違うので、こちらも参考にしてみてください。
また、こちらも参考になれば幸いです。