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副業収入300万円以下なら雑所得?所得税通達改正案のまとめ

2022年8月20日

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副業収入が300万円以下だと雑所得になる、という話を聞いたけど、どういうこと?内容について教えてほしい。

 

こんなお悩みを解決します。



本記事の内容

  • 2022年8月1日に国税庁が公表した所得税基本通達の一部改正案において、副業収入が300万円以下の場合には、特に反証がない限り、雑所得とすることが明確化されたことについての改正内容
  • 改正による影響について
  • これらについて、税理士である僕がなるべくわかりやすく解説します。

 

本記事の信頼性

 

本記事を書いている僕は、音楽で食べていくことを目指して10年ほど活動するも挫折し、その後、税理士事務所で働きながら税理士の資格を取得しています。これからの時代には、収入の柱をいくつか持つことが必要だと強く感じており、投資、副業、起業などに興味をもち日々色々と模索している30代です。

 

副業・兼業を政府が推進し、副業を認める企業もどんどん増えていますが、副業をする人にとって悩ましいものの一つに確定申告があります。

そもそも申告すべきか、申告する場合、事業所得と雑所得どちらになるのかなど、確認すべきことがいくつかあります。

副業に関する確定申告については別の記事でまとめているので参考にしてみてください。

 



そんな中、2022年8月1日に国税庁は所得税基本通達の一部改正案についてのパブリックコメントの募集を開始しました。

 

この改正案の内容は「副業収入が300万円以下の場合には、特に反証がない限り、雑所得として取り扱うこととする」というものです。



副業をして申告をしている人の中には、非常に困る人も出てくるかもしれません。

今回は、この改正案の内容について整理しています。

 

なお、2022年10月7日に、本改正案に修正が行われました。

修正の内容についてはこちらをご参照ください。

 



改正案の内容:副業収入300万円以下は雑所得に該当

Rules

 

まずは、どのような改正案なのか整理していきます。

 

雑所得の範囲の明確化

 

今回の改正案は所得税基本通達に関するものとなっています。

改正案となっていますが、ほとんどの場合、その内容のまま改正が行われることになります。

 

これまで副業にかかる所得は、基本的には雑所得に該当することが想定されているものの、実態としては雑所得にすべきか事業所得にすべきか、その所得区分の判断が難しいものとなっていました。

 

今回の改正案では、雑所得の例示として「その所得がその人の主たる所得ではなく、かつ、その所得の収入金額が300万円以下の場合には、特に反証のない限り、雑所得に該当する」という内容が示されました。

 

これまでは「事業としての実態」という抽象的な文言になっていたものが、具体的な数値を用い、反証がないのであれば、300万円以下の副業は雑所得に該当する、と基準を明確にしています。


ちなみに、

そもそも税法における基本通達とは、法律ではありません。

通達とは、上級行政庁が、その所管行政の統一を図るために下級行政庁に対して法規の解釈や運用方針等を示した内部規定になります。

つまり、法律が細かく規定されていない部分について、実務上の運営指針等を示した内部規定であり、これのみを根拠に課税することはできません。

通達の運用については、通達を形式的に落とし込み、全体の趣旨から逸脱した運用を行うのではなく、個別具体的な事情を勘案して判断する必要があるとされています。

とはいえ、実務上は通達は非常に細かく具体的な処理方法が規定されており、基本的には、通達の記載内容に基づいて税務署は判断することが大半であるため、その内容は非常に重要です。

 

反証がある場合とは

 

今回の例示では「その所得がその人の主たる所得ではなく、かつ、その所得の収入金額が300万円以下の場合には、特に反証のない限り、雑所得に該当する」とされています。

つまり、反証があるのであれば、300万円以下でも事業所得になる可能性がある、ということになります。

 

ここでいう反証がある場合とは、例えば、継続して事業所得で申告していたものの、新型コロナの影響などの特殊な理由により収入が300万円以下になった、などが考えられます。

 

このように事業所得に該当すると主張できる理由があるのであれば、副業の収入が300万円以下であっても、事業所得に該当する可能性はあると考えます。

ただし、副業を始めたてで、まだ300万円を超えたことがない場合には、事業の実態があると説明することは、なかなか難しいかもしれません。

 

 

収入金額が300万円超の場合

 

今回の改正後、副業収入が300万円を超えていれば事業所得でいいのか、と思ってしまいますが、そういうわけでもないようです。

 

副業収入が300万円を超えている場合でも、事業所得に該当するかどうかは、これまでと同様、その所得を得るための活動が、社会通念上、事業として行われているといえるかで判断する必要があるそうです。

 

具体的な条件はこちらの記事で触れているので参考にしてみてください。

 



適用時期

 

今回の改正案は、2022年度の所得税から適用される予定とされています(2022年8月19日時点)。

 

つまり、早速影響があるということになります。



副業収入300万円以下が雑所得になった場合の影響

Influence

 

次に、今回の改正の影響について説明します。

事業所得として申告した場合と雑所得として申告した場合で、主にどのような違いがあるのかをみていきます。

 

細かい点もありますが、主な影響としては次の二つが挙げられます。

 

  • 青色申告特別控除
  • 給与所得等との損益通算

 

それぞれ説明していきます。

 

青色申告特別控除

 

青色申告を行う事業主は、事業所得を計算するときに、一定の要件を満たすことで最大65万円の特別控除を受けることができます。

 

雑所得の計算では青色申告特別控除は適用されません

 

ざっくりとした計算ではありますが、仮に所得税と住民税の税率の合計が約30%の人の場合、65万円の控除を受けられないときには、約20万円ほど税負担が増えることになります(本来はもっと詳細な計算が必要です)。

 

給与所得等との損益通算

 

事業所得で収入よりも経費が多く生じ、結果としてマイナス(赤字)になった場合、この事業所得のマイナスと給与所得は損益通算することができます。

つまり、事業所得のマイナスは、給与所得に課される税金を節税する効果があります

 

雑所得になった場合、給与との損益通算はできません

 

今まではこのルールを使い、副業を事業所得として申告し、本来は事業とは関係のない私用の支出も経費に含めてマイナスを作り、給与所得とぶつけるという節税(というより脱税)をすることが問題になっていました。

今回の改正案により、このような行為を防ぐことができます。

もちろん、真面目にやって、結果として事業所得がマイナスになっている人もいると思いますが、事業所得でなくなった場合には損益通算はできないことになります。

 

まとめ

 

今回の改正案にて「副業の収入金額が300万円以下の場合には、特に反証のない限り、雑所得に該当する」という例示が出たことで、ある程度、雑所得の範囲が明確化されました。

個人的にはこれまでモラルのない節税(脱税)が横行していたことにメスが入ることは課税の公平性の観点からは良いことだと思います。

 

ただ、真面目に何か事業を始めようとしていて、まずは副業として行なっているような人にとっては、ある程度の収入が出るまで事業所得として申告できないということになると、なんとも納得のいかない改正案となっています。もちろん、反証して認められる可能性もなくはないですが。

 

今後、最終的にどのような改正となるか、引き続きモニターしていきます。

 

 










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