マイクロ法人を設立しようと思っているけど、株式会社と合同会社どっちがいいの? メリット・デメリットを教えてほしい。
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- 株式会社と合同会社の違い
- 株式会社と合同会社それぞれのメリット・デメリット
- マイクロ法人は株式会社と合同会社どちらがいいか
これらを税理士が解説します。
本記事の信頼性
本記事を書いている僕は、30代で2児の父でもある税理士です。 子育て世代に役立つ育児に関する情報やマネーに関する情報などをまとめています。
副業を認める会社も増え、マイクロ法人を使った節税なども最近は増えています。
マイクロ法人を作る場合や副業を法人で行う場合など、株式会社と合同会社どちらにするか、最初に考えると思います。
そこで今回、株式会社と合同会社の違い、それぞれのメリット・デメリットについて整理してみたので参考になれば幸いです。
結論として、マイクロ法人のように小規模に事業を行うことを前提とするならば、合同会社で始めるのがよいと思います。
なお、マイクロ法人を作るメリットについてこちらでまとめていますので、参考になれば幸いです。
株式会社と合同会社の違い
まずは株式会社と合同会社の違いについてまとめています。
株式会社とは
株式会社を簡単にいうと、
「株式を発行して資金を集め、そのお金を用いて事業を行っていく会社」
をいいます。
株式会社は出資した人(株主)と会社を経営する人(取締役)が分離が図られているのが特徴のひとつです。
ただし、株主が取締役を務めることも可能で、所有と経営が必ず分離してなければならない、というわけではありません。
株式会社は不特定多数の人が株主になることが想定されているので、会社法で多くの規定が置かれています。
合同会社とは
合同会社は、2006年に施行された新会社法において創設された会社形態のひとつです。
合同会社は株式会社に比べ、柔軟な組織設計や意思決定手続をすることが可能であり、出資者と経営者が一致しています。
2021年度には新規で設立される会社の3社に1社が合同会社になっています。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社の違いについて簡単にまとめると次のようになります。
こちらを踏まえ、それぞれのメリットとデメリットなどを説明していきます。
株式会社のメリット
株式会社の主なメリットについて説明していきます。
株式会社のメリット:①社会的信用
合同会社の設立は増えていますが、まだ、社会的な認知度は株式会社の方が高いです。
株式会社としか取引をしないという会社もまだありますので、その意味でも社会的信用が合同会社より高いのは事実です。
株式会社のメリット:②株式を発行して資金調達できる
株を発行して資金調達できるのは株式会社のメリットのひとつとして挙げられます。
ただ、マイクロ法人を設立するという観点では、このポイントはあまり影響することは少ないと思います。
株式会社のデメリット
続いて株式会社のデメリットを説明します。
株式会社のデメリット:①設立費用が高い
株式会社は合同会社に比べて設立費用が多くかかります。
設立時の登記申請時にかかる登録免許税は、株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は最低6万円となります。
また、株式会社は定款作成後に、公証役場で認証を受ける必要があり、手数料が3万円から5万円かかります。
つまり最低でも株式会社の設立費用は18万円程度がかかることになります。
合同会社は6万円程度で設立できるので、小さくはない差となっています。
株式会社のデメリット:②決算公告が必要となる
株式会社は、定時株主総会の終結後、貸借対照表を公告する必要があります。
電子公告の場合には1万円ほど、通常公告の場合には7万円ほど費用がかかります。
合同会社には公告義務はありません。
株式会社のデメリット:③役員任期がある
株式会社の役員の任期は最長10年です。
再任の場合にも登記が必要になるため、その時に登録免許税(1万円または3万円)がかかります。
合同会社の場合には、任期がないので登録免許税などは不要となります。
合同会社のメリット
続いて合同会社のメリットを説明します。
基本的には株式会社のデメリットとミラーになります。
合同会社のメリット:①設立費用が安い
株式会社のデメリットでも説明していますが、株式会社の設立費用は18万円ほどかかるのに対して、合同会社は6万円ほどで設立できます。
設立時にコストを抑えられるのは大きなメリットになりますね。
合同会社のメリット:②機関設計の自由度が高い
株式会社の場合、機関設計について会社法で多くの規定が置かれており、機関設計の自由度は低くなっています。
例えば、取締役会を置く場合には、監査役を置く必要があったり、細かくルール化されています。
これに対し、合同会社は機関設計などについて強行規定がほとんどなく、経営の自由度が高くなっています。
合同会社のメリット:③利益配分が自由
株式会社の場合、配当は出資比率によって分配されます。
合同会社の場合、定款によって分配割合を自由に定めることができます。
つまり、出資割合を超える割合で配当することも、特定の社員に対して配当することも可能です。
参考
株式会社の場合、純資産額が300万円を下回る場合には配当できなかったり、資本準備金や利益準備金が資本金の4分の1に達するまで、配当額の10分の1を振り返る必要があるなど、配当についての規制があり、小規模な法人が配当する場合には制約となってしまいます。
合同会社のデメリット
続いて合同会社のデメリットです。
こちらは株式会社のメリットとミラーになるものが多いです。
合同会社のデメリット:①社会的信用が劣る
合同会社の設立は増えていますが、まだ、社会的な認知度については株式会社に劣る部分があります。
また、合同会社は組織設計が柔軟という特徴がありますが、一方で意思決定方法が閉鎖的であるという見方もできることから、信用度が低いとみられてしまうこともあります。
合同会社のデメリット:②上場できない
マイクロ法人という観点ではあまり関係はないかもしれませんが、合同会社は上場できません。
ただ、合同会社は株式会社に組織変更することもできます。
少し手間はかかりますが、登録免許税を節税する観点で、合同会社として設立、その後株式会社に組織変更するケースは実務上見ることもあります。
まとめ
最後に株式会社と合同会社の違いを再度並べています。
マイクロ法人の設立の観点では、手続きや設立費用などを考慮すると、まずは合同会社として設立することがおすすめです。
どちらも法人であることには変わりないので、法人税など税務上の取り扱いは基本的には同じになります。
こちらもぜひ参考になれば幸いです。