児童手当に所得制限があるって聞いたけど、所得制限がかかるとどうなるの?
具体的に所得制限はいくらで、どうやって計算するの?
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- 児童手当とは?
- 児童手当の所得制限について
- 児童手当の所得制限の計算方法は?
- 児童手当の所得制限をオーバーした場合の対処方法について
- これらを税理士がわかりやすく解説
本記事の信頼性
本記事を書いている僕は、30代で2児の父でもある税理士です。
子育て世代に役立つ育児に関する情報やマネーに関する情報などをまとめています。
2023年6月、児童手当拡充が政府より公表されました。
具体的には、児童手当の拡充は次のような内容となっています。
- 所得制限の撤廃
- 支給対象年齢の18歳までへの引き上げ
- 第3子以降への一律3万円支給など
2024年10月から適用が開始され、最初の支給は2025年2月ということです。
だいぶ先ですね。政府の公表から1年半以上も先になります。
児童手当拡充はまだ先ですが、現行制度がどのようになっているか、所得制限はどのように計算するのかまとめていますので、参考になれば幸いです。
もくじ
児童手当とは
まずは児童手当の概要についてまとめていきます。
児童手当の金額
児童手当は中学校卒業までの児童を育てる人に支給されます。
中学校卒業までとは、15歳になる誕生日後の最初の3月31日までとなります。
児童手当の金額は次のとおりです。
このように、もし満額でもらえるとすると総額200万円ほどになります。
金額に幅があるのは、誕生月によってもらえる期間が変わるためです。
4月生まれであれば、3歳以降小学校卒業まで120ヶ月(10年)分もらえますが、3月生まれの場合、11か月短い109ヶ月分となります。
なお、2024年10月以降の児童手当拡充後との比較はこのようになります。
児童手当における第3子の数え方
現行の児童手当における第3子の数え方は、単純に3番目の子どもというわけではありません。
児童手当における第3子とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どものうち3番目をいいます。
例えば、高校3年生、中学2年生、小学校1年生の3人兄弟がいるとします。
この場合、小学校1年生の末っ子は第3子に該当します。
つまり、児童手当は15,000円が支給されます。
ただし、翌年になり、大学1年生、中学3年生、小学校2年生になると、大学1年生の長男はカウントしないことになり、小学校2年生の末っ子は第3子に該当しないことになります。
児童手当は10,000円になります。
現時点では、児童手当拡充後も、この第3子の数え方は変更しないそうです。
児童手当の支給対象
児童手当は基本的には日本に住んでいる児童を対象として支給されます。
ただし、子どもが留学している場合や、親が海外に住んでいる場合などでも一定の条件のもと支給されます。
詳しくは、内閣府の児童手当Q&Aに記載されているので、参考にしてみてください。
また、父母どちらにも所得がある場合には、所得の高い方が受領します。
世帯年収で見るのではなく、どちらか収入の高い方で見るというのが不公平と言われる要因となっています。
児童手当の所得制限の計算方法
続いて、児童手当の所得制限について説明します。
児童手当の所得制限とは
児童手当の所得制限は2段階になっています。
第1段階:特例給付(一律5,000円支給)になる制限
第2段階:給付カットになる制限
第2段階の給付カットの制限は2022年10月支給分から適用されています。
制限がかかる所得は扶養親族等の数などによって異なりますが、このようになっています。
なお、こちらの金額は所得ベースとなっています。
具体的な計算方法についてはこの後説明していきます。
児童手当の所得制限における扶養親族等の数とは
児童手当の所得制限は扶養親族等の数によって金額が異なります。
ここでいう扶養親族等の数は税法上の扶養人数をいい、社会保険上の扶養とは異なります。
税法上の扶養親族は、年間所得48万円以下(給与所得者であれば年収103万円以下)の場合に扶養としてカウントされます。
なお、扶養親族等の数は前年の12月31日時点の人数をカウントします。
つまり、今年子供が産まれたとしても、扶養親族の数は増えません。
翌年からカウントすることになります。
例えば、次のようなケースでの扶養親族等の数はこのようになります。
今年子供が産まれて、配偶者の年収が103万円超:扶養親族等=0人
今年子供が産まれて、配偶者の年収が103万円以下:扶養親族等=1人
子供が2人、配偶者の年収が103万円超:扶養親族等=2人
子供が2人、配偶者の年収が103万円以下:扶養親族等=3人
児童手当の所得制限の計算方法
児童手当の所得制限の表の金額は年収ではなく、児童手当上の所得の金額となっています。
具体的な計算方法はこのようになっています。
これをみてもわかりづらいですが、内閣府が給与所得を前提にした場合の、目安の給与収入(年収)を示しています。
給与収入の場合、給与収入から給与所得控除額と所得金額調整控除(収入が850万円以上の場合のみ)を控除して、給与所得を計算します。
給与収入から控除する給与所得控除額は、年収によって控除額の算式が次のとおり決まっています。
さらに、年収が850万円以上で、扶養親族がいる場合には、これとは別に所得金額調整控除というものが控除されます。
これは(収入金額ー850万円)×10%として計算します。
なお、収入金額は1,000万円が上限となるので、控除額は最大で15万円です。
例えば、扶養親族1人の場合の特例給付となる所得は660万円、これに対応する目安収入は875.6万円となっています。
これは次のように計算されています。
①給与収入 875.6万円
②給与所得控除額 195万円
③所得金額調整控除 (875.6万円-850万円)×10%=2.56万円
④給与所得①ー②ー③=678.04万円
まずはこのように給与所得を計算します。
次に、児童手当計算上、給与所得がある場合10万円を控除するため、
678.04万円ー10万円=668.04万円が所得額になります。
ここから控除額を引きますが、目安計算なので控除額0として計算しています。
もし医療費控除などがあれば、引くことになります。
最後に児童手当の所得計算上、8万円を控除することになっているため、
上の表でいうAの金額は668.04万円ー8万円=660.04万円となります。
なお、いつの所得を用いるかというと、1月から5月分の手当の場合には前々年の所得を、
6月から12月までの手当の場合は前年の所得を用いることになりますので、だいぶ面倒です。
児童手当の所得制限を超えそうな場合の対処法
所得制限がかかるか微妙な状況において、もしかしたら有効になるかもしれない対処法を説明します。
誰にでも当てはまるわけではありませんが、参考になれば幸いです。
児童手当の制限所得がオーバーしそうな時の対処法:①医療費控除
児童手当の所得制限における所得は、次にように計算します。
つまり、控除額を増やすことができれば、Aの基準となる所得を下げることができます。
控除額を増やすためにできそうなものは医療費控除と小規模企業共済等掛金控除額(いわゆるiDeCo)くらいになります。
家族が多いと、集計してみると意外に医療費がかかっていることがあります。
金額によっては控除額を増やすことができ、所得制限ギリギリくらいの時には、有効になる可能性もあるので、確認してみるのもいいかと思います。
医療費控除についてはこちらでも詳しく説明していますので、参考としてください。
児童手当の所得制限がオーバーしそうな時の対処法:②iDeCo
iDeCoの掛金も控除額の増加につながります。
もしiDeCoをするか悩んでいる人がいるなら、検討してみるのも一つかもしれません。
iDeCoのメリットとデメリットについてはこちらで詳しくまとめています。
ただし、2024年10月からは所得制限もなくなるので、児童手当のためだけに加入する必要はないと思います。
まとめ
現行の児童手当の内容や所得制限の計算方法についてまとめてみました。
なお、児童手当は申請をしないと支給されません。
例えば、前年は所得制限がかかる所得を超えていたが、今年は医療費控除が多く、所得制限がかからない、といった場合でも、申請をする必要があるので注意してください。
2024年10月以降に児童手当は拡充され、所得制限もなくなることになりますが、しばらくは現行制度が続きますので、参考になれば幸いです。
こちらも是非参考にしてみてください。