日商簿記3級や日商簿記2級は人気資格ランキングでいつも上位だけど、本当に役に立つの?
具体的にどんなメリットがあるの?
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- そもそも簿記とは?具体例を用いて簡単に説明します。
- 簿記の資格を取得するメリットについて、税理士がまとめています。(経理や税務をやっていない方にも参考になります)
本記事の信頼性
本記事を書いている僕は、税理士事務所で働きながら税理士の資格を取得しています。
日商簿記2級は大学在学中、独学で取得しました。
簿記の勉強が税理士を目指すきっかけとなり、今では「取得してよかった」ととても思っています。
人気資格の上位に「日商簿記3級」や「日商簿記2級」がランクインしていますが、ネット上では本当に役に立つ資格なのか疑問視されることもありますね。
「就職や転職に役立つ」
「企業の経営状況がわかるようになる」
「どんな仕事にも活かせる」
こういったメリットをよく見かけますが、個人的には半分賛成、半分疑問といった印象を持ちます。
今回は、簿記取得のメリットについて、税理士である僕の個人的な意見となりますが、お話ししたいと思います。
結論として、一番のメリットは「これからの副業・資産運用・起業が身近になる時代においては重要な(というか必須の)資格」だと考えます。
あくまで個人的な意見ですので、ひとつの考え方として参考にしてもらえれば幸いです。
もくじ
そもそも簿記ってなに?
簿記について、簡単に説明します。
簿記とは
簿記とは、「帳簿記入」の略であり、「日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにするための方法」をいいます。
もう少し簡単にいうと、簿記は「決算書を作成するための技術」です。
決算書とは「経営活動の成績」と「財政状態」を表す書類で、いわゆる「貸借対照表」や「損益計算書」などをいいます。
つまり、
- 簿記により、日々の取引や経営活動を帳簿に記録し、
- この帳簿により、決算書である「貸借対照表」と「損益計算書」を作り、
- 「貸借対照表」と「損益計算書」で、経営活動の「財政状態」と「経営成績」を明らかにすることになります。
具体的にイメージできるように、説明していきます。
仕訳と決算書の具体例
簡単な数字を用いて、具体例を示してみます。
あくまでイメージするためなので、色々と簡略化していますのでご留意ください。
簿記においては、何かの取引が行われたときに、その取引の仕訳をきることになります。
仕訳とは、取引を借方(左側)と貸方(右側)に振り分けることをいいます。
借方=かりかた 「り」は左を向いているので左側、
貸方=かしかた 「し」は右を向いているので右側
と覚えます。
例えば、次のような取引を行った場合には、このような仕訳がきられます。
①資本金100,000円で会社で設立する。
(借方)現金 100,000円 (貸方)資本金 100,000円
②会社が銀行から50,000円を借り入れる。
(借方)現金 50,000円 (貸方)借入金 50,000円
③現金で商品を150,000円仕入れる
(借方)仕入 150,000円 (貸方)現金 150,000円
④仕入れた商品を200,000円で売る
(借方)現金 200,000円 (貸方)売上 200,000円
仕訳から決算書である「貸借対照表」と「損益決算書」が作られます。
貸借対照表 | |||
資産の部 | 負債の部 | ||
現金 | 200,000円 | 借入金 | 50,000円 |
純資産の部 | |||
資本金 | 100,000円 | ||
利益 | 50,000円 | ||
資産の合計 | 200,000円 | 負債+純資産の合計 | 200,000円 |
損益計算書 | |||
売上原価 | 売上高 | ||
仕入 | 150,000円 | 売上 | 200,000円 |
当期利益 | 50,000円 |
貸借対照表には資産・負債・純資産が示され、財政状況を表します。
損益計算書には収益と費用が示され、経営成績を表します。
このように簿記を学ぶことで、一連の活動における財政状況(貸借対照表)と経営成績(損益計算書)である決算書の作成ができるようになります。
簿記を勉強するメリットとは?
税理士である僕個人としての意見ですが、メリットをまとめています。
簿記を勉強するメリット ①副業・資産運用・起業時代にかなり重要!
昨今では副業を認める会社も増えていますし、起業のハードルを下げ、起業家を増やそうとする施策を政府が打ち出すなど、今後、副業や起業はさらに身近なものになっていくと考えます。
また、NISA制度の拡充なども進み、資産運用ももっと身近になってくると思われます。
そうなると、簿記の基本的な知識を有することはかなり重要(というか必須)になっていきます。
簿記を勉強するメリット ②副業におけるメリット
今後はサラリーマンも副業を持つ必要性が高まっていくでしょう。
副業をすると、サラリーマンでも確定申告を行うことになります。
この時、簿記の知識があるとないとでは、税金に関する理解がだいぶ違ってきます。
副業を行った場合、一定程度の規模になった場合、事業所得が生じることになります。
現在の法令では、このような事業所得の申告において、決算書を添付することで税金を減らす制度(青色申告特別控除)の適用を受けることができます。
詳しくはこちらも参照にしてみてください。
>>サラリーマンの副業は確定申告が必要?わかりやすく解説します。
簿記の知識があれば、簡単な事業であれば、税理士などに頼まなくても自分で決算書を作成することができます。
簿記を勉強するメリット ③資産運用におけるメリット
NISA制度が拡充するなど、貯蓄から投資へという流れが加速しています。
NISA以外にも、資産運用としては株式や投資信託等の他、不動産、保険、FXなどなど、たくさんの投資商品があります。
不動産投資などは特にかもしれませんが、簿記の知識がないと利回りのシミュレーションや、収益管理、確定申告など非常に苦労すると思います。
簿記の知識は資産運用の観点でも、持っているのといないのでは、大きな違いが出てしまう可能性があるので、最低限の簿記の知識は必要だと考えます。
簿記を勉強するメリット ④起業におけるメリット
最近は起業する人も非常に増えています。
自分で起業するのに決算書を読めないとなると経営状況について、全く把握できないことになってしまいます。
最低限、簿記の知識を持つことが重要になると思います。
簿記を勉強するメリット ⑤就職や転職に有利?
個人的には、誰しもに当てはまるわけではないと思います。
経理や税理士事務所では必須になっているなど、簿記の資格はスタートラインに立つための最低限の装備、という印象です。
仕事柄、いろいろな会社の経理部などとのやりとりが多いため、経理周りの部署に限定した見解ですが、最近はどの会社でも採用活動に苦労しています。
これは大企業やその子会社にもある程度当てはまりますし、中小企業は特に苦労している会社が多いです。
税理士法人や税理士事務所も同様で、大手でも採用活動に苦労していて、年々、採用ハードルをどんどん下げているといった状況です。
そのため、経理や税理士法人などの採用という観点では、簿記2級であっても、かなり選択肢が広がってきています。
経理部などは会社の中でも特に回転が早い方の部署になるので、ひとつの会社にとりあえず入り、数年経験を積むことで、転職機会が増えるのは間違いないです。
ニーズが高い部署なので、うまく転職活動を行うことで年収を上げる転職を繰り返している友人もいます。
簿記を取得することで、確実にそういったメリットは得られますし、今後はさらにそのメリットの要素が強くなると考えます。
まずは転職サイトに登録して、市場の状況を確認することもおすすめです。
簿記を勉強するメリット ⑥その他のメリット
その他によく言われるメリットとして「企業の経営状況がわかるようになる」「どんな仕事にも活かせる」といったものがありますが、僕はあまりそう思いません。
企業の経営状況は簿記を学んだだけではわからない
経営状況を示す指標はいくつかあるので、それは別途勉強しないと簿記だけではわかるようにはなりません。
ただし、簿記の知識は、その他の関連する資格を勉強する上でのベースの知識には間違いなくなります。
どんな仕事にも活かせるということはない。
デザインの仕事に活きるか、看護の仕事に活きるか、と言われると、そんなことはなく、直接的には活きることはないと思います。
とはいえ、幅広い知識を持つことは考え方の引き出しを増やしますし、人生を豊かにすると個人的には考えます。
色々な場面で、簿記の知識が直接的ではなくとも、間接的に活きてくる機会はたくさんあります。(自分自身のファイナンシャルプランを考える時にも、簿記の知識があるとないとでは見え方は違ってきます)
以上が僕が思う、簿記を取得するメリットになります。
個人的な見解ですが、少しでも参考になれば嬉しいです。
簿記を取得するのであれば、たくさんのツールがあると思いますが、効率よく勉強する、という意味では、資格学校で学ぶのが確実だと思います。
こちらでおすすめの資格学校をまとめているので参考になれば幸いです。
上の記事でも書いておりますが、僕はTACが勉強する環境としてはいいと個人的には思っています。
まとめ
副業・資産運用・起業がさらに身近になる今後においては、簿記の知識は非常に役立つことが多く、必須と言ってもいいものだと思います。
簿記は経理、財務、税務に関する専門の知識という印象が強いかもしれませんが、そんなことはなく、汎用性が高く、誰しもに必要な知識になりつつあると個人的には思っています。
メリットはあってもデメリットはない資格ですので、迷っているのであれば、とりあえず勉強を始めてしまった方がいいと思いますし、絶対に後悔はしないと思います。
こちらも参考になれば幸いです。